コラム

ペットロスにどう向き合う?今から始めるグリーフケアが幸せのカギに

 

「ペットロス」はペットを飼っている人にとって、とても身近な言葉です。動物たちの命は、人間よりも短いことが多いもの。だからこそ、いつかはやってくる「その日」を、恐れている人も多いのではないでしょうか。しかし、ちまたで言われる「ペットロス」とは一体どんなものなのか、誰もが陥るのか、どうすればそこから回復できるのか、その全貌はあまり語られてこなかったように思います。
ペットとの幸せな暮らしを最後まで守り抜くために、「飼い主の皆さんが今からできること」について調べてみました

ペットロスを語るには、まずグリーフケアを知ろう

グリーフは身近に存在する感情

グリーフとは、直訳すると悲嘆であり大切な対象を失ったときに表れる自然な心理状態をいいます。人間は生きていく中で、「大切なものを失う経験」をたくさん重ねていきます。友達、恋人との別れや、引っ越し、病気などもグリーフ体験の1つです。そしてその中の1つがペットロス。大切な「うちの子」を亡くす経験になります。グリーフケアは、言葉のとおり様々なグリーフをケアしていくことを指しますが、喪失後だけではなく、喪失前、「失うかもしれない」と感じたときや、普段の生活の中でできるケアであることが、ペットロスのケアとは大きく違います。

ペットロスケアとグリーフケアの違いは?

ペットロスケアはペットの死後に生じる、飼い主の治療や介護に対する後悔、自責や他責の念、罪悪感などの苦痛に対するケアを指します。一方、グリーフケアでは、死後のケアだけでなく、病気を予期する生前の段階からかかわりを持ってケアします。グリーフケアとは生前から死後の回復まで長期間飼い主とペットの心に寄り添う手助けといえます。

普段の生活の中でのグリーフケアとは、一体どのようなものなのでしょうか?

人とペットが、幸せに生きていくうえで安全基地となる自宅(HOME)は人とペットにとってありのままでいられるテリトリーであり、弱った心と身体を安心して投げ出しエネルギーを充電できる場所です。人が暮らしていたテリトリーにペットが加わり、家族の一員になります。すると家に帰りを待つペットがいることで、人の笑顔と安心感が増えます。ペットが人のエネルギー源となるのです。そしてその人の笑顔を見てペットも喜びます。ペットの幸せは人の幸せと相互作用しながら成立するのです。安全基地(自宅)はグリーフを回復(ケア)する重要な拠点といえます。

人はペットによって、ありのままの自分を好きでいてくれる存在を手に入れ、心の安全基地を手に入れています。また、ペットは名前を呼ばれ、なでられ、毎日ごはんを食べてよく眠れる安心できる場所、安全基地を、飼い主によって手に入れているのです。このように、飼い主とペットは普段の生活の中でともにグリーフケアをしてきた、かけがえのない存在だからこそ、失ったときに深いグリーフを抱えます。でもそれは、とても自然なこと。愛し、愛されていた証拠なのです。そのことをぜひ、忘れないでください。

最期まで「その子らしい」、ハッピーエンディングを

ペットロスに陥ることを防ぐ方法はないのでしょうか?

ペットロスは自然な心の動きであり、誰もが陥るものだと考えたほうがいいでしょう。ただ、その深さには個人差があります。長く深いペットロスを防ぐためのポイントは、生前のグリーフケアにあると考えられています。

グリーフ(ペットロス)の心理過程

このように、心にはダメージから回復していくプロセスがあります。1から4にどのくらいの時間がかかるかは人それぞれですが、最期の時間、看取りへの後悔や納得いかないことがあると、より大きな悲しみとなって、2の悲痛期が長引くことがあります。
つまり、病気や体調不良という大きなグリーフを抱えた「うちの子」にどう向き合っていくかが、深いペットロスを防ぐための最大の鍵だということ。ペットロスからの回復は、ペットの存在を忘れるということでは決してありません。「この子らしく生き抜けた」と思えるからこその立ち直りであり、一緒に大切な時間を過ごせたという事実があるからこその回復なのです。

この子らしく生き抜くために、飼い主は何をしてあげるべきなのでしょうか?

例えば病気になったとき、飼い主の皆さんは、何をしてあげたいと思いますか。ある猫の飼い主さんは、数日前から自分で水を飲みにいけなくなった猫ちゃんのために、「もう無理かな」と思いながらも、元気なときと同じように水を用意してあげていました。すると、亡くなる前に、最期に自分で力をふりしぼってその子は水を飲みに行ったそうです。その姿を見て、飼い主さんはとても感動されたそうです。

このようにその子らしい姿を見せてくれたのは、その子がその子らしく動ける環境を飼い主さんが用意していたからこそ。「できない」と諦めなかったからこそです。その子らしく過ごさせてあげることができれば、最期の時間は、飼い主にとっても、その子にとっても宝物のような時間になります。これが共有できれば、「ペットロスから回復できない」ということにはなりづらいのです。
ですので、まずは、今目の前にいる子をたっぷりとかわいがってあげてください。そして、その子らしく過ごせる毎日を守ってあげましょう。
いつか病気になってしまったり、年をとって思うように動けなくなったりしても、その子らしさを飼い主さんが理解してあげていれば、大丈夫。最期までその子らしく生き抜ける道を飼い主さんがしっかりと考え、選んであげることが、「うちの子」への最大のグリーフケアになり、飼い主にとっては、ペットロスを長引かせないための重要なポイントになります。